提言―4・政経―皇室典範

政経―皇室典範に関する提言(皇位継承について)


(1)水俣病問題と天皇即位問題

 ①天皇以外の皇室の人間(皇太子も含む)は誰と結婚するかは憲法上は自由であり、外国人とですら結婚は可能である。

 ②しかし、天皇の場合には異なる。憲法一条上、国民統合の象徴でなければならず、伴侶(はんりょ)が共産党委員長の娘どころか、現役の自民党総裁や民主党代表の娘、宗教でも創価学会池田大作氏の娘、浄土真宗の最高位にある人の娘……では、国民統合とならない危険がある。

 時には選挙にすら影響を与える。例えば社民党党首の娘と結婚すれば社民党は大躍進をするかもしれない。当然他の政党との軋轢(あつれき)が生じる。依(よ)って原則として、こうしたケースでは天皇の位(くらい)は別の皇族に譲るべきとなる。私の意見ではなく、憲法一条解釈である。

 ただし、嫁さんの親が一般のキリスト教徒、浄土真宗の檀家(だんか)、一般の創価学会員レベルならば支障はないと考えられる。同様に雅子氏の祖父がチッソ社長・会長であったため、もし水俣病で国内が紛糾している状況にあれば、憲法一条解釈上、「国民統合の象徴」とならない危険性がある。依(よ)ってその場合には③と④しかない。(現在、水俣病を巡る状況がその段階かどうかは、今回記述しない。)

 ③秋篠宮氏が天皇になれば問題はない。「皇太子は国民統合の象徴である」とは憲法一条には記述されていないため問題は生じないが、天皇は別である。

 ④もう一つの解決方法は、水俣病を巡る国民対立がなくなればよい。即ち、政府が二〇〇四年の最高裁判決を尊重し、それ以上に患者に対して手厚く保護をし(極論すれば、疑わしきは全て水俣病患者として救済する等)、水俣病を巡る訴訟が事実上ゼロになれば、現皇太子が天皇となっても憲法解釈上問題はない。水俣病以上に、水俣病を巡る対立が、憲法一条解釈上問題だからである。そして、水俣病を巡る対立を解消させる責任は、雅子氏や皇太子ではなく、政府にある。

 ⑤もし、水俣病が解決し、それを巡り国民の中の対立がなくなった場合には、誰が天皇になるかは私が口を出す領域ではない。自然消滅的に水俣病問題を巡る対立がなくなったときも同様である。


 (2)皇室典範改正を急がない方がよい理由 

 日本国憲法がある限り、天皇は存続し続ける。
 万一、皇室全員が飛行機の墜落事故などで死亡してすら、天皇は存続することとなる。憲法一条に天皇の規定があるのだから。依(よ)って現行憲法がある限り、天皇は存在する。こうした場合には皇室典範を改正して、もはや皇室でなくなっている人間(例えば旧宮家)を、皇族に復帰する意思があれば皇室に復帰できるようにして、その中から新天皇を選ぶだけのことである。皇室典範は単なる法律であり、憲法と異なり手続上は改正は簡単であり急ぐ必要はない。(皇室でなくなった人を皇室に戻すことは、犯罪者への遡及[そきゅう]処罰禁止とは異なり、可能だからである。)

 余りに急いで皇室典範を今改正することは、敬宮愛子内親王(としのみや あいこないしんのう。二〇〇一年十二月一日 ~ )を天皇にするか、悠仁親王(ひさひとしんのう。二〇〇六年九月六日~ )を天皇にするかという具体的な内容に直結し、同時に、それは子(ちょうし)至上(しじょう)主義派か男系天皇至上主義派(愛子氏の後からは女系となり王朝が断絶するということへの危機派)との対立となり、国民統合とは逆の対立という結果となる。そこで、皇室典範改正は、悠仁親王が天皇となったときくらいに改正することが望ましいかもしれない。

 ただし、天皇家全体の意向でどうしても愛子氏を天皇にしたい場合には、愛子氏が天皇になるのに相応(ふさわ)しい年齢に近づきかけた時期に検討することが望ましい。なお、この場合には国民の対立(長子主義か男系主義かの対立等)が予想されるため、慎重にかつ長期に亘(わた)り、検討する必要がある。私自身は誰が次期天皇に望ましいかについては白紙であり、諮問は当然しないし、その資格もない。ただ、日本国憲法が存続し、その上で遠い将来に皇室典範を改正する場合には、皇位継承の仕方の理想は私案では以下の通りである。


 (3)皇位継承会議・皇室典範に関する提言

 ①天皇夫妻(二人)と天皇の子供全員(現在ならば黒田清子さんも含めて三人)が集まり会談をし一定の候補者を出す。原則として全会一致が望ましい。理由は以下二点にある。

 戦後の男系長男と限定したのは、天皇を巡っての皇室内の内乱や日本全体での内乱を防ぐ目的であったと推定される。皇族全体では事情が違うかもしれないが、天皇家内部においては大昔と異なり、天皇の座を巡る争いはもはや起こり難(かた)い状況になっている。特に美智子皇后の登場以来天皇家の姿も変わり、一般家庭と同様に全員で協議をすることも可能な条件がうまれてきていると推測される。

 更に、健康問題、その他の問題上、天皇になりたくない人も、今後は天皇家内で出てくる可能性もある。天皇になることはメリットとデメリットの両方がある。そうした観点からも、天皇家内の話合いで候補者を選ぶことを検討しても良い時期に来ていると思われる。


 ②将来は皇位は女系天皇・男系天皇、男性天皇・女性天皇、長子(ちょうし)か否かとは無関係に、憲法一条(日本国民のシンボル及び統合)に一番相応(ふさわ)しい人物という視点から選ぶことが望ましいと個人的には考えている。

 男系天皇は民主主義に沿わない等(など)は欺瞞(ぎまん)である。女系天皇云々(うんぬん)も同様である。女系天皇を認めても、三人女の子がいれば、一番上の子とする以上、民主主義云々を言うのならばもはや民主主義とは矛盾している。同時に、将来、男系でも女系でも長子至上主義の場合には、憲法一条に相応(ふさわ)しくない人が登場しないという保証はないため、危険な面がある。このケースほどではないが、大正天皇の場合でも、病弱のため十五歳で結婚させられる運命を背負ったという悲劇がある。その他、予期せぬケースも長い歴史の中では起こりうるであろう。

 依(よ)って遠い将来の理想は、天皇家内で候補者を天皇家の会議で決め、それらを参考にしながら、皇室会議で、長子かどうか、男性か女性か、男系か女系かではなく、憲法一条に相応(ふさわ)しい人物を天皇とすることが望ましい。


 ③そこで、皇室会議は、天皇一家の意見を尊重しながら国民統合の象徴となる人物は誰かをいろいろな角度から検討し、皇室会議が最も適当と判断した人物を天皇候補とする。ただし、この場合には大学入試の如く些細(ささい)なレベルで序列をつけるのではなく、天皇の資格が大きく欠如しており象徴として不適格とか、国民統合上、極めて問題がある場合のみ、天皇家の意志と反する人物を天皇に推薦することが望ましい。


 ④天皇家の推薦する人物と皇室会議の推薦する人物が同一であれば問題はない。しかし、相違があれば、両者で再協議し調整を行う。もし更に不一致があれば議会に議席を所有する全政党から知識人・有識者を推薦してもらい、また皇室からも有識者を推薦し、これらの有識者を中心に更に多方面の有識者を集め諮問会議を開き、その結果を尊重して皇室会議で次期天皇を選ぶ、である。


 ⑤勿論、天皇に推薦された人物が、天皇の座を拒否することは可能である。その場合には再度最初から先の手続で別の天皇を選ぶ。
 上記①~⑤の過程で選ぶことが望ましい。当面は①と③④⑤のみでもよい。


 特に、二〇〇九年三月七日に様々な関係者が言っていたように、天皇になることは過剰負担問題や健康問題もあり、それらの視点からも天皇家内の意見を尊重することは重要である。そこで、現在ですら天皇家内の会談内容は重視し、最低でも、参考にする必要がある。何故ならば、天皇になることはメリットと同様にデメリットがあるからである。依(よ)って、当事者の意見も尊重しなければならない。

 因(ちな)みに、内紛が予想されるときには思い切った手を打つことも検討に値する。例えば、天皇の子供のAを支持する人五十パーセント、Bを支持する人五十パーセントで、しかも国民などが熱狂し対立が激しい場合にはAを天皇とし、Bを摂政に該当する地位に暫くおくなども必要時には検討し、国民統合の象徴であるという憲法一条を守る必要がある。
  


  • 【解説】
  • ①上記の文書は拙著『日本のフィクサーME―上巻』(Kindle版)第3章第八節からの抜粋である。
  • ②小泉内閣で2004年12月27日に設置された「皇室典範に関する有識者会議」が、2005年11月24日には皇位継承について女性天皇・女系天皇の容認、長子優先を柱とした報告書を提出した。

     その前後に、私にも打診があったように思えた。私は「女性天皇と女系天皇は意味が違い、場合によれば大変な対立を生むことになるので焦らないように、無意味でもテレビに向かって言ってみた。時期はこの報告書の少し前ではないかと思うが定かではない。

     それから少しして、秋篠宮家で御懐妊のニュースが流れた。
     当時のいきさつや、女性天皇と女系天皇の違いは拙著『同上書』を参照願いたい。
  • ③それよりもかなり前に、雅子氏の母系祖父がチッソ元社長であったたことを某原稿で記していた。やがて、今回の問題への提言も求められた気がした。後者を『日本のフィクサーME』で情報公開している際に、前者の問題についても問われた。

     そこで、この提言で、前者の問題も含めて皇位継承問題について触れた次第である。
     詳細は『同上書』を参照願いたい。
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  • 【2016/08/11追記-1】
    上記提言と2016年8月8日「天皇生前退位」関連の皇室典範に関する内容は無関係である。

     上記提言は「小泉内閣で2004年12月27日に設置された「皇室典範に関する有識者会議」が、2005年11月24日には皇位継承について女性天皇・女系天皇の容認、長子優先を柱とした報告書を提出した」ものを受けて記述したものである。

     女性天皇ではなく、女系天皇とは神武天皇からの系譜ではなく、場合によれば小和田家の系譜に変更されることを意味するため、この場合の皇室典範改正は慎重に、時間をかけてすべきであるという提言である。

     今回(2016/8/8)は今上天皇の激務、年齢、病気問題などに関する皇室典範改正であり、また天皇の系譜が変更される問題ではないため、現時点では、私は長期間に亘(わた)る論議を必ずしも提唱してはいない。人道的配慮が緊急に望まれていると考えている。

     なお、この提言時から時間が経っており、本年か来年末に修正案を記述予定でいる。また、本文に秋篠宮氏の名がでてくるが、私は秋篠宮氏を推奨してもいないし・その逆でもない。ただ単に、本文にたとえで記しただけである。天皇一家の考えも考慮しながら、皇室会議と国民的議論で決めるべき問題と考えている。
  • 【2016/08/11追記-2】
    上記(1)の箇所に、水俣病についてふれている箇所があるが、2004年頃の話であり、「2016年現在の現状はどうなっているのか」不明である。そこで、この件に関してのコメントは現時点では白紙とする。